夢のような現実
痛いほど強く打ちつけてくる雨に、河は轟々と雄叫びを上げて荒れ狂う。
死を決意して身を投げたはずなのに、無意識のうちに上へ手を伸ばしていた。
助けて。
暗く冷たい水に呑み込まれる苦しみに堪え切れなかった。
助けて、高杉さん…!
必死に高杉さんに助けを求めた。
けれど、高杉さんはおろか、誰もこの手を掴んではくれなかった。
どれだけ自分が高杉さんに頼りきっていたのか、まざまざと実感させられた。
そんなことだから、私は高杉さんに左眼を失わせてしまったんだ。
高杉さんに助けを求めるなんて、許されないことだった。
あの優しいぬくもりも、楽しかった思い出も、高杉さんを愛していることも、
すべて忘れてしまえばいい。
そうすれば、この生にしがみつくこともなくなるだろう。
ゴポゴポと気泡が上へ上へと昇ってゆく。
目を閉じて、上へ伸ばしていた手をそっと引いた。
その手を、誰かが掴んだ。
「」
自分を呼ぶ声に、は目を開けた。
そこは先程見ていた光景と同じく暗闇だったが、静かで、温かかった。
見上げれば、高杉の顔がすぐ傍にあった。
「高杉さん…?」
「どうした、魘されてたぜ」
覗き込んでくる隻眼は酷く優しい。
これは、夢だろうか。はぼんやりとした頭の中でそう考えたが、すぐに思い直した。
違う、あれが夢だ。寒くて冷たい、一人ぼっちの怖い夢。
目頭が熱くなって、涙が溢れてくる。
あの時、誰も掴んでくれなかった手を、高杉が握っていてくれていた。
高杉はそっと手の力を緩め、そのままの背中に腕を回し、自分の胸へと寄せる。
もそれに甘んじ、身を縮めてもぞもぞと高杉に身を寄せた。
「高杉さん」
「何だ?」
「あったかい」
「…そらァよかったな」
それ以上、高杉は何も言わない。
だが、こうして抱き締めていてくれる。はそれだけで心が満たされた。
高杉の体温を感じながら目を閉じる。
涙が零れて頬に伝ったが、はそのまま眠りに落ちた。
2007年1月4日 目を開ければ、貴方がいる。それが現実だから、もう怖くないよ。
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